本日はお招きいただきありがとうございます。
名城大学の近藤敦と申します。
入管庁の政策懇談会や在留外国人に対する基礎調査、東海地方の10の自治体の多文化共生推進プランの策定に関与しております。
在留手続の手数料については、法律案67条2項が諸外国における同種の手数料の額を勘案して定めるとあります。
比較対象の選び方を誤ると、日本の実情に即した判断を見失う恐れがあります。
以下では、比較の際に注意すべき5点を述べます。
第一に、アメリカ、イギリス、カナダでは、就労資格の滞在許可が100万円を超えたり、何十万円もすることがあります。
しかしこれらの国では法律上または実務上、その費用は雇用主が負担するのが一般的です。
したがって、これらの国を同種の手数料と見るのは適切ではありません。
もし比較するのであれば、日本でも企業側の費用負担を前提とする制度に改める必要があります。
そこで日本との比較対象としては、個人が負担する同種の手数料を見るのが適当です。
フランスは3万7千円、イタリアは2万9千円、ドイツは1万6千円、韓国は1万円です。
これらと比べると、日本の想定されている1年で3万円、3年で6万円、5年で7万円という水準は割高に感じられます。
なお、EUの非EU市民に関する定住指令10条では、手数料は不均衡であってはならず、過度であってはならないと定めています。
2015年にイタリアが引き上げた高額手数料については、比較的頻繁に更新を求められることや、在留資格を持たない人の送還費用に当てられることなどを理由に、ヨーロッパ司法裁判所が社会統合、日本でいうところの共生社会の目的に照らし、不均衡と判断しました。
イタリアはこの判決を受けて手数料を引き下げています。
したがって、EU定住指令の加盟国であれば、日本の想定しているような高額手数料は指令違反として違法と評価される恐れがあります。
第二に、アメリカの3億円の投資家向け永住権は、日本の永住許可とは性質が異なります。
日本が将来、巨額投資を行う外国人向けの永住制度を設ける場合には比較対象になりますが、現行の永住許可と同種の手数料と見るのは適切ではありません。
日本の永住許可と比較できる各国の手数料を見ると、アメリカは10万3千円、フランスは3万7千円、イタリアは2万9千円、ドイツは2万4千円、韓国は2万円となっています。
これと比べると、日本の新たな20万円という手数料は相当に高い水準だと言えます。
日本は受入抑制政策を進めており、昨年受入数を2割減らしています。
今回の日本の急激な値上げも、日本に期待と考える外国人を減らす可能性があります。
例えば、経営管理の在留資格について、資本金要件を500万円から3000万円に引き上げるなどした結果、申請者が96%減少したと最近報じられております。
このように外国人に対する負担増のメッセージは敏感な反応が予想されます。
諸外国と比較する際には、似た状況にある国を参考にすることが重要です。
まずは表1に示した国連の人口及び生産年齢人口の将来予測を見てください。
長期的な減少が見込まれていないイギリスやカナダと同じ抑制策を取るよりも、減少が予測されるドイツやイタリアや韓国を参考にするのが日本の状況に適しています。
第三に、1回あたりの手数料の高さだけではなく、永住許可に至るまでの居住期間も考慮する必要があります。
表2のとおり、日本では原則10年の居住が必要であり、これはOECD諸国の中で最長です。
したがって、日本では他国より頻繁に在留期間の更新が必要となるため、累積的な手数料負担は一層重くなると予想されます。
第四に、表3にあるように、日本における外国人の国籍取得率は、OECD諸国の中でほぼ最低の水準であることから、国籍を取得せず、長期の滞在外国人として頻繁に手数料を払う人の割合が、日本では相対的に多いことが予想されます。
第五に、日本で生まれ育った外国人の子どもの割合も相対的に高いのが日本の特徴です。
表4に示すように、アメリカやカナダは2世は国民です。
イギリスやドイツでは永住者の子は国民ですし、フランスでは2世は大人になれば自動的に、イタリアでは届け出れば国民です。
日本と韓国は帰化しなければ外国人のままという状況にあります。
この点でも、イギリスやカナダのような高い手数料よりも、韓国のような安い手数料の方が日本には適当と思われます。
もしくはイタリアのように未成年者の手数料を免除することを検討する必要があるように思います。
次に法律案67条3項の「その他特別の理由により手数料を免除する場合」、イタリアやドイツや韓国を参考にすると、難民申請者、補完的保護申請者、難民、補完的保護対象者、人道上の在留特別許可者、未成年者等が考えられます。
フランスでは季節労働者、学生、求職者、家族呼び寄せの受益者などが減額の対象です。
最後に、法律案67条2項の「外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する費用の額」という説明が、人・住民にとって本当に納得できるものなのか、私は疑問に思います。
ここでは特に在留の公正な管理に不可欠な手続保障の観点から申し上げます。
そもそも公正な管理には適正手続が確保されることが含まれると入管法の基本書にも書かれております。
しかし現状では、高い手数料を払って申請しても、不許可の場合に通知書に具体的な理由は書かれません。
抽象的な理由だけでは、申請者はなぜ不許可になったのかが分かりません。
これでは適正手続きが確保されているとは言えないと思います。
ドイツをはじめ、多くの国では、行政手続き法が在留手続きにも及んでいます。
EU諸国では、定住指令10条により、不許可通知には理由を記載し、利用できる救済手続きとその期限を示すことが義務付けられています。
こうした理由付与と救済の仕組みは、イギリス、アメリカ、韓国でも共通しています。
また、4月に永住の居住要件を原則10年に引き上げました。
しかし、5年以上と定める国籍法は改正せず、運用で対応したことは、法律による行政という法治主義、あるいは法の支配の尊重の欠如を示しております。
日本国民たる要件は、法律でこれを定めるとする憲法10条に反する問題であり、立法府の責任として国会で審議した上で法律に明記すべきです。
さらに先ほど触れた経営管理の在留資格の厳格化についても申し上げます。
すでに何度も更新し、真面目に経営してきた経営者と、法治国家のルールだと考えます事例は異なりますが、政策転換の影響で滞在許可の更新を拒否された外国人について、法治国家の信頼保護原則を根拠に更新を認めたドイツの判例もあります。
加えて、比較対象とする外国制度の見方も厳密であるべきです。
政策懇談会の折に、韓国が資本金要件を500万円から3000万円に引き上げていることを、法務委員会で投資の方が多いことも分かりました。
したがって、比較対象とする外国制度については、何が本当に日本と比較可能なのかを丁寧に見極め、エビデンスに基づく政策決定の精度を高める必要があります。
手数料を引き上げるのであれば、外国人の出入国に適正手続きは不要とする考え方を改め、行政手続き法の適用除外を見直すべきです。
それこそが法治国家における立法府の使命だと考えます。
ジェスタンについてもEUのエティアスのように不許可通知に理由を記載し、不服申立ての保障をし、必要に応じて本人が理由を補充説明しながら、大使館でビザ申請を行えるようにするなど、入国の公正な管理に配慮した制度設計にしていただきたいと思います。
以上で私の意見陳述を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
ありがとうございました。