アメリカの優位性といいますか、日本にとって投資すべき対象であるということのご説明でございます。
アメリカは引き続き世界最大の経済大国であり続けると思います。
IMFの世界経済見通しによれば、2031年のアメリカの名目GDPは約39兆ドルと見込まれ、日本の約8倍に達する見通しです。
そしてそのアメリカは、先進国では数少ない人口増加が続く国でございます。
人口は2025年3億5000万人から2050年までに3億7000万人まで増える見通しでございます。
実質経済成長率もこの間、2050年まで年平均1.7%が見込まれて非常に安定成長ができる国でありまして、しかもそれが内需主導でございます。
日本企業から見れば、世界で最も進出して事業と収益を伸ばしやすい国がアメリカでございます。
経済規模と成長率で見れば、アメリカに次ぐ大国として中国がございます。
しかし中国は、これだけ発展を遂げてきてもなお輸出主導であり、供給過剰の経済であります。
これは恐らく今後も相当変わらないと思われます。
アメリカとは経済発展のモデルが極めて異なっておりまして、日本企業にとってはこの中国への投資を通じて収益を上げ拡大していくということは非常に難しいということが言えると思います。
一方で日本国内でございますけれども、今回の法案ですね、この産業競争力強化法の一部改正等につきましても、やはり国内投資の促進ということが強く示されておりまして、私もこの投資の拡大は十分可能であると思いますし、また必要であると思います。
ただ一方で、人口減少等の日本固有の制約を考えますと、日本企業としましては、国内投資と海外投資、とりわけアメリカへの投資の両輪で成長を続けていくことが大事であり、それが日本経済の繁栄の持続にも必要であると考えております。
そしてその日本企業でございますが、すでにアメリカへの投資では近年、勝ち筋を見出しつつあります。
アメリカの発表によりますと、2019年以降、日本企業はアメリカへ年平均400億ドル近い直接投資を続けてきております。
24年末の最新のデータによりますと、投資残高も8192億ドル、約130兆円に達しまして、これはアメリカに投資する国としては世界最大になっております。
その対米投資から得られる収益も着実に増え続けておりまして、最近は年間350億ドル近くに達しております。
直接投資の収益の多くが実際にアメリカでの再投資に回っているのは現実でございますが、そうは言っても、近年は配当などで日本に還流される金額も非常に多くなってきております。
積極的にアメリカに投資する企業が日本でも株主還元という形で増やしておりまして、日本での株価の上昇にもつながっているということで、十分波及する好循環が生まれつつあるのが現実でございます。
かつて日本とアメリカの経済関係は貿易、中でも日本からの輸出が中心でございましたし、対米貿易の黒字の多さがアメリカの雇用を奪っているなどと批判を浴び続けてきた経緯がございます。
かつてアメリカの貿易戦争の相手も日本だった時期がございます。
日本企業はこの経験を教訓として、80年代からアメリカとの経済関係を貿易から、アメリカで雇用創出する投資への転換を進めてまいりました。
自由貿易の観点からはやや疑念というものもございましたけれども、しかしその後でございます。
2000年代から中国がアメリカに対して、過去の日本をはるかに上回る巨額の輸出と貿易黒字を記録するようになってきております。
競争に敗れたアメリカの製造業の雇用が大きく失われ、チャイナショックという言葉がアメリカで広がっております。
保護主義がアメリカの超党派で支持され、自由貿易がアメリカの国益に反するという見方が広がっております。
対中強硬姿勢を唱えたトランプ氏が2016年の大統領選で勝利し、その後も米中の貿易戦争、それから昨年のトランプ第二次政権による関税政策につながっているという経緯もございます。
これを振り返れば、日本企業の貿易から投資への転換は正しい判断であったと思われます。
そして、ただその投資が海外に開放されているアメリカは非常にオープンなアメリカとはいえ、実際には外国企業がアメリカに投資をして安定した収益を得られるようになり、しかもさらにその規模を拡大していくということは、実は容易なことではございません。
日本も1年あたりの投資収益が今300億ドルを超えるようになったのは2020年代に入ってからでございます。
同水準の投資収益を得ている国も日本以外ではカナダ、ドイツ、イギリスぐらいでございまして、いずれも日本に匹敵する投資残高のある国であります。
アメリカでのこの投資の成功には、アメリカでの競争環境、市場の特性、雇用慣行ですとか法規制、それから社会との共生など熟知することが必要でございまして、やはり経験が必要でございます。
アメリカであるいは、このアメリカよりも強い製造業ですとかサービス業が自国にあるということも大事でございまして、こうした国のみが着実に投資を伸ばしているのだと思います。
実際、アジアの中国、ベトナム、韓国、台湾などは対米輸出、それから貿易黒字も多いのでありますが、直接投資の残高は1000億ドルに達しておりません。
やはり、まだまだ対米投資を伸ばす条件が揃っていないのが現実でございまして、韓国、台湾は今、こうしたアメリカ向けの投資を増やそうとしておりますけれども、まだまだ苦戦が続くと思われます。
そして今後も投資を伸ばせる状況をクリアしておりますのが、日本であるということになります。
とはいえ、日本企業の対米投資にもやはり限度がございます。
投資を行いますのは個社でございまして、1件あたりの規模はどうしても限られます。
各社厳しい投資基準を設定しておりまして、対象を絞り込んでおります。
必然的に大型、特にリスクの大きい挑戦的な案件というのは、どうしても少なくなるのが実態でございます。
そして、そうしたもとで、具体的に例えばこれがどのような弊害を呼んでいるかというと、例えばアメリカの先端産業でございます。
日本企業の投資が伸びる対象とは異なる可能性が高いと思います。
例えば現在、アメリカで大手テック企業が激しい競争を通じて極めて積極的にAI関連あるいはデータセンター等に投資を続けております。
これが実は今のアメリカ経済の成長を支えている面もございますけれども、ここに直接挑む日本企業は極めて少ないと思われます。
投資規模が非常に大きすぎますし、日本企業は決して業界内で優位な立場を確保しているわけではございません。
投資対象としてはこの分野は非常に有望ではありますが見送る企業が大半になってくると思います。
さらに、アメリカの国内企業だけでも、アメリカで投資機会がありながらなかなか実現しないといったインフラ等の分野もたくさんございます。
そうした個社の投資の限界を超えて、日本の対米投資の新境地を切り開く、あるいは日米関係を新たなレベルまで進化させる可能性を有しておりますのが、今回のこの日米政府の戦略的投資イニシアティブであると思います。
この両政府間の投資に関する共同ファクトシートに記されておりますエネルギー、AI向け電源開発やAIインフラ、重要鉱物等の分野も、発表されたこの第1陣、第2陣のプロジェクトを見ましても、いずれもやはり個社の直接投資では手が届かない、このイニシアチブが向いているということを示している内容になっていると思います。
そして、この日本の投資法人とアメリカの現物出資で組成されます特別目的事業体によるプロジェクトでございますけれども、これは一種の官民共同の民間創業スキームでございます。
JVICと民間金融機関からの融資、それからJVICの出資とアメリカからの現物出資というものを組み合わせたこの事業体が、民間事業者に事業運営を委託する役割分担もやはり必要になってくるというふうに見ております。
個社の対米直接投資の多くは、やはり日本の一定規模以上の企業にしかできない。
そうしたことも実は今回のイニシアティブの特に魅力といったものを示していると思います。
このイニシアティブは、プロジェクトに参加する企業、金融機関の役割、リスク負担が限定され、プロジェクト運営、製品供給、これは日本からの輸出も含みます。
それからこの製品を引き取るオフテーカーといった機能に日本企業が参加する機会が多くなります。
個社の直接投資よりもはるかに多くの企業、それから大企業から中小企業まで、スタートアップまでも関与が可能になるスキームでございまして、日米の経済関係、それから日米をつなぐサプライチェーンに参加できる企業の数も増えてくることが期待できます。
幅も広がると思います。
アメリカにとっても、このイニシアチブなしでは実現しなかった案件が十分あり得るということでございまして、大きな成果となってくると思います。
実際、この発表済みのプロジェクトを見ましても、関連機器等の供給とオフテーカーとしての関与というところから、日本企業が多く関心を示しております。
一方で、この関心を示す日本企業でありますが、よく見れば実はアメリカで投資済みの経験が多い企業もやっぱりこの中で多く占めているということでございまして、やはりアメリカでしっかり投資と事業の経験がある日本だからこそ、このイニシアティブをしっかり回していけるというところも、やはりこの可能性を既に示唆しているというところかと思います。
そして、このイニシアティブを支えますのは日本からの融資でございます。
金額的にも特に大きいのは、とりわけ下半を占めると予想されます民間金融機関の融資でございます。
各金融機関はもちろんアメリカでのファイナンスの経験は豊富でございますが、従来のファイナンス手法では個別のプロジェクトの各項によります検証あるいはデューデリジェンスといったものが不可欠でございまして、これはどうしても相当の時間とコストは必要になってしまいます。
イニシアティブの資金の規模も、従来のファイナンス方法では各金融機関を圧迫するリスクもあります。
NEXIの保証付きの融資は、この民間金融機関のリスクをカバーする形になり、イニシアティブとプロジェクトの制約を取り払い、円滑な運用をするという意味で重要な意味を持っていると思います。
一方で、このイニシアティブの資金の規模の大きさが、貿易保険法の改正を通じたNEXIの特定引受業務の創設と財務基盤の強化を必要としていると思います。
イニシアティブの着実な履行、日米経済関係の進化、日本企業のアメリカに関わる事業と収益の拡大、日米関係の一層の安定の鍵も握っていると思っております。
そして一方で、NEXIの保証によりまして、個々のプロジェクトのリスクがもちろん消えるわけではございません。
すべての案件がバンカブル、いわゆる銀行融資が可能であること、それからフィジブルプロジェクトに関わる企業が収益を持続的に確保できることがもちろん必要でございまして、期限やイニシアティブの目標規模の達成が優先され、案件の精査が不足するということはあってはならないと思っております。
この点がこのイニシアティブのリスクであり、懸念というところでは本質になってくるかと思います。
しかし、この案件の失敗は日本だけでなくアメリカにも実は多大な損失をもたらします。
アメリカにとっては案件実現が勝利ではなく、事業を継続までしっかり確立しなければ、やがてその事業は撤退、そしてこの雇用の減少ということになり、結果としてアメリカにまた新たな産業の衰退地域、ラストベルトを生み出してしまうことになりかねないということであります。
日本だけが損失を被り、アメリカは後退するという組み合わせにはならないということも、やはり私は思っているところでございます。
そして、この案件の収益性や持続性の確立というところでは、分散された役割を担う企業、金融機関、政府がそれぞれリスクを洗い出し、取り除いていくことがもちろん大事でございます。
イニシアティブでは日米両国で構成いたします協議委員会、投資委員会の厳格な判断がとりわけ重要になります。
中でも日本政府、JVIC、NEXIが協議委員会やその前段階での案件審査、不適合案件の拒否をしっかりやっていくことが必要になってくるわけでございまして、イニシアティブの整備もこのスキームでは協議委員会に大きくかかってくるかと考えております。
JVICとNEXIに損失が生じれば、これ国民負担の増大ということになってしまうわけでございまして、イニシアティブそのものを揺るがすことになりかねません。
そうしたところから、やっぱり案件審査にだからこそ深く関わり、リスク解消に、例えばNEXIがその機能を十分発揮していくためにも、この貿易保険法の改正が重要であると思います。
ファイナンスは事業の進捗に応じて、今回このスキームでは段階的に実行する仕組みになっているんです。
それでもイニシアティブの規模の大きさがありますので、民間金融機関のドル調達ですとか、融資余力などの懸念はどうしても残ってしまう部分はあります。
そこは、いろいろ日本以外の金融機関の関与を必要に応じて求めていく、あるいはプロジェクトを成功に導くような事業主体そのものの確保といったことも重要になってまいります。
こうしたことを併せて、しっかりと進めていくことが大事でございまして、改めてさらに今後でありますけれども、日米政府のこのイニシアティブを構成項目とした日米関税合意がそもそもございました。
その後のアメリカの関税政策は実は変化しているわけでございまして、前提が大きく変わってきている。
そして具体的なプロジェクトや案件の進捗を通じて、イニシアティブと日米の意味も変わってきているということでございまして、そうしたものも踏まえて日米政府間でしっかり、このイニシアティブがどれが一番具体的に今良いのかということを、その都度やはり協議していくことが大事かと思います。
以上でございます。