農林水産大臣、鈴木憲和君。
農林水産委員会の開催に当たりまして、所管大臣としての考え方の一端を申し述べます。
昨年から政務三役を先頭に、福島の都をはじめ、北海道から沖縄まで、全国各地の特に厳しい現場に足を運び、農林水産業、食品産業の現状を直視してきました。
各地で試行錯誤をしながら頑張っている方々との意見交換を踏まえ、現場の皆様の気持ちに沿った政策をつくり、実行することで、農林水産業、食品産業が次世代により良い形で継承されるようにしたいと考えております。
以下、農林水産行政に関して、私の基本的な考え方を申し述べます。
いくら理想的な政策も、現場の皆様の心が動かずには効果を発揮できません。
このことを心に留め、「農は国のもとなり」という言葉の通り、農林水産省の最も重要な使命である国民への食料の安定供給を実現します。
昨年12月に農林水産省に日本の農林水産行政の戦略本部を設置いたしました。
この下で、攻めの分野と守りの分野を明確にし、テーマごとに戦略を作り、実行することで、食の分野を我が国の経済における稼ぎの柱とし、世界の中で食の分野における日本の存在感を示していけるよう取り組みます。
我が国の主食である米は、一年一作であるからこそ、需要に応じた生産を推進することを基本として、現場の農業者と消費者の双方から見て、先の見通せる農政を展開することが重要です。
昨年8月に行った価格高騰の要因や対応の検証を踏まえ、同年11月に取りまとめた米の安定供給に係る対策を実行に移すとともに、関係する事業者への在庫量、出荷販売量などの定期報告の義務付け、民間備蓄制度の創設、需要に応じた生産の推進を内容とする法案を今国会に提出します。
また、米の供給不足に備えるため、令和8年3月の政府備蓄米の買い入れを行います。
我が国の農林水産業を取り巻く環境は、国際情勢の不安定化や自然災害、気候変動等の影響、人口減少や高齢者の引退による担い手の急減など、大きく変化をしています。
このような中でも、食料安全保障を強化していくため、世界における日本の食のマーケットをつくり、国内外の需要拡大を進めるとともに、拡大した需要に対応できるよう、生産基盤を維持し、生産性や付加価値の向上を進めることにより、稼げる農林水産業を実現し、供給力を強化します。
令和7年度から11年度までの農業構造転換集中対策期間において、すべての手札をフル活用すべく、別枠予算を確保します。
農地の大区画化や中山間地域におけるきめ細かな整備、共同利用施設の再編・集約合理化、スマート農業技術の開発、生産性向上に資する農業機械の導入、輸出産地の育成などといった施策を集中的に進めます。
併せて、日本中央競馬会の国庫納付の特例措置についての法案を今国会に提出し、構造転換に必要な財源に充てることとします。
こうした取組により、農林漁業者の収益力を高め、食料自給率、食料自給力の向上に全力を尽くします。
以下、具体的な政策を申し述べます。
水田政策について、令和9年度に向けて根本的な見直しを行います。
水田を対象として支援してきた現行の水田活用の直接支払い交付金を、水田か否かにかかわらず、作物ごとの生産性向上等への支援へと転換するといった基本的な方向性の下で、詳細を本年6月までに取りまとめます。
米の生産性を抜本的に向上させつつ、米粉や海外マーケットの創出など、政府が前面に立って国内外の需要拡大策を実施することで、必要な水田を維持するとともに、米以外の作物を作る農地について、食料自給力向上の費用対効果を踏まえて、これまで作付けしてきた作物の本産化を図るべく政策を転換します。
併せて、農業者の経営安定のためのセーフティーネット対策の充実についても検討します。
資材価格等が高騰する中においても、農林水産物食品の持続的な供給が可能となる、生産・加工・流通・販売・消費に至る食料システムの確立を図ります。
食料システム法に基づくコスト指標の作成により、持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成を推進します。
食品産業については、農林水産業との連携の下での国産原材料の利用拡大による付加価値向上の取組や、中継共同物流拠点の整備によるサプライチェーン全体の物流効率化により、持続的な発展を図ります。
世界の食市場が拡大するチャンスを生かして、農林水産業、食産業の海外から稼ぐ力を強化します。
農林水産物食品の輸出について、2030年5兆円の輸出額目標に向けて、政府一丸となり取り組みます。
抜本的な輸出拡大に向けて、輸出先国の多角化、現地系商流への売り込み、輸出産地の育成や輸出事業者の裾野の拡大、外食産業の海外展開、輸入規制の緩和・撤廃協議を加速します。
また、昨年の日米協議での合意内容の履行に加え、米国の関税措置の壁を乗り越えて輸出を拡大できるよう事業者を後押しします。
食料システムを環境と調和の取れたものとするため、新たな環境直接支払い交付金の創設や有機農業の推進などの「みどりの食料システム戦略」の加速化、気候変動への適応策の強化などに向け、「みどり加速化GXプラン」を取りまとめます。
人・農地の観点から持続可能な農業構造にしていくことも喫緊の課題です。
各市町村が策定した地域計画については、農林水産省の職員も現場に入るなど、危機感を持ってブラッシュアップに取り組み、受け手不在農地の解消や担い手への農地の集約化を進めます。
その際、地域全体を支える意味で、さまざまな担い手の存在が重要であることにも十分留意をします。
規模の大小や個人・法人など経営形態を問わず、農業で生計を立てる担い手を育成・確保するため、新規就農や新規参入を促進するとともに、経営発展を後押しします。
また、拡大する農業分野の資金需要に対応するため、民間資金のさらなる活用を促進するとともに、民間金融機関が取り扱う制度資金の貸付条件を見直すための法案を今国会に提出します。
少ない農業者でも生産水準を向上できるよう、農業生産基盤の整備とスマート農業の推進が欠かせません。
農地の大区画化や水利施設等の更新・省力化整備とともに、スマート農業技術の開発・普及を進めます。
併せて、スマート農業技術に適合した新たな生産方式への転換や、スマート農業に関わる人材の育成、情報通信環境を整備します。
さらに、専門作業の受注等により、農業者をサポートする農業支援サービス事業者を育成・確保します。
激甚化する自然災害、気候変動の影響に左右されず、安定的な生産力を確保できるよう、農業農村の国土強靭化対策を進めるとともに、政府全体の成長戦略のもと、日本の先端技術の粋の詰まった世界トップレベルの植物工場、陸上養殖などのフードテックへの官民連携による投資を促進します。
これらの技術により生産性を抜本的に向上させるとともに、我が国農林水産業の稼ぐ力を高め、世界のスタンダードとなっていく食の未来をつくります。
食料の安定供給に向けて、高温耐性や病害虫抵抗性、多収性や加工適正、スマート農業技術適正などを持つ革新的新品種を開発し、導入を図る必要があります。
このため、農業者や実需者、海外も含めたマーケットのニーズに応じ、産官学連携による有用な新品種の育成・普及の加速化、有用品種の海外への流出防止対策の強化を図るための法案を今国会に提出します。
全国の総農家数、耕地面積、農業産出額のそれぞれ約4割を占め、洪水防止や生物多様性の保全など多面的機能の発揮においても、中山間地域が重要である一方で、これまでの政策ではその衰退を止めることができませんでした。
この反省を踏まえ、中山間地域でも将来にわたって営農して稼ぎ、暮らしていける農政を展開し、地域に対する貢献も含め、若い世代が地元に残って農林水産業に携わろうと思ってもらえる環境をつくります。
このため、地域の実情に応じて中山間地域等直接支払い交付金など農業を支えるための施策の充実と、地域特性を生かした公益作物の導入や複合経営の取組の支援、きめ細かな基盤整備など、農業で稼ぐための施策を一体的に講じます。
食料生産の基盤である農山漁村を維持していくため、農泊・農村連携など、多様な人材が農山漁村に関わる機会の創出、民間投資の呼び込み、多様な地域資源を活用した付加価値の創出を関係省庁と協力して推進し、人口急減地域への支援を強化します。
鳥獣被害の防止や自備への利用を進めます。
農業者の皆様が安心して営農できるよう、昨年11月に取りまとめた鳥獣被害対策をはじめ、効果的・効率的な鳥獣被害対策を迅速かつ着実に実行します。
畜産・酪農は、国民の食生活における大切なタンパク源を供給するとともに、地域経済を支える重要な産業です。
畜種ごとの経営安定対策や持続可能性に配慮した取組、畜舎や食肉処理施設の整備などによる生産基盤の強化とともに、生乳や牛肉の需要拡大に向けた取組を推進します。
また、耕畜連携などによる国産飼料の安定的な生産・利用の拡大を進め、輸入飼料依存度の低減を図ります。
家畜の伝染性疾病の発生状況や、輸入検疫を適切に受けずに持ち込まれる肉製品などの増加等を踏まえ、ランピース菌病の家畜伝染病への格上げに加え、検疫体制を強化するための法案を今国会に提出します。
鳥インフルエンザについて、今シーズンはこれまでに21例、約506万羽が殺処分対象となっており、都道府県養鶏業者等と危機感を共有しながら、飼養衛生管理の徹底を基本とした発生予防・まん延防止対策に万全を期してまいります。
アフリカ豚熱については、水際での侵入防止対策に全力で取り組むとともに、研究機関や国内企業との連携のもと、ワクチン開発を進めます。
また、産業動物獣医師の確保に努めます。
森林林業政策については、1,000万ヘクタールの人工林の6割超が利用期を迎える中で、「切って、使って、植えて、育てる」森林資源の循環利用を進めます。
このため、JAS構造材やCLT等を活用した中高層木造ビルの建設など、国産材の需要拡大を図るとともに、小規模に所有が分散している森林の集積集約化や、スマート林業の推進、林業の振興などにより、林業の生産基盤を強化します。
併せて、森林整備や地山対策への取組により、森林吸収源の機能強化と国土強靭化を進めます。
さらに、花粉症対策を着実に実行します。
こうした施策の具体的な方向性を定める新たな森林林業基本計画を、本年6月頃を目途に策定します。
水産資源は再生可能な資源であり、永続的な利用が可能となるよう、資源管理が大切です。
これに加え、日本近海の海水温の上昇が世界平均の2倍を超えるなどの海洋環境の激変に適応する必要があります。
このため、海水温の自動観測を通じた水産資源の調査評価の強化、漁獲対象漁種の変化に対応した新たな操業形態への転換、労働環境の改善と収益性の向上を両立させる新たな漁船の導入など、未来の水産業を担う経営体・人を確保し、水産業強靭化の実現に向けた変革を進めます。
また、違法操業の未然防止・根絶のため、徹底した監視取締りに取り組みます。
併せて、漁村の再生・活性化に向け、地域資源等を活用する海業の振興、漁村環境の保全に向けた漁業者の活動を支援します。
農林水産業、食品産業の発展の礎は、消費者、国民の皆様の理解を得ることにあります。
食育、食文化の保護・継承や生産現場体験の取組を通じて、理解を深めていただくとともに、食料の持続的供給に寄与する行動変容につなげます。
また、円滑な食品アクセスの確保を図るため、ラストワンマイル配送に向けた取組、フードバンク等を通じた食料供給を円滑にする地域の体制づくりなどを進めます。
さらに、横浜市で開催される2027年国際園芸博覧会の成功に向け、会場整備や機運醸成に取り組むほか、政府出展においては、いけばな、盆栽などの日本の文化の極みや、農業環境に関する最先端の技術を展示すべく準備を進めます。
東日本大震災の被災地域である福島県では、依然として営農再開の加速化や広域的な産地形成、帰還困難区域を含めた森林林業の再生、安定的な水産物生産体制の構築、福島県産品の販路拡大などに取り組む必要があります。
市町村ごとに復興のステージが異なることを踏まえ、現場のニーズに沿って万全の支援を行います。
また、近年頻発する豪雨、豪雪や台風などの自然災害からの早期復興に取り組みます。
能登地域においては、令和6年能登半島地震、同年9月の豪雨による被害からの復旧・復興を一体的に推進します。
私自身も現場の声に一つ一つ答えながら、「森は海の恋人」という言葉も踏まえ、農地、農業用施設、林地、林道、漁港、漁場の復旧など、農林水産業の再建を切れ目なく支援します。
結びになりますが、各種施策を講じるにあたり、地方自治体などの職員の皆様の負担が大きくなっていることを踏まえ、例えば衛星写真やAI解析の活用など、現場に近い行政の負担軽減に取り組みます。
藤井委員長はじめ、委員各位に重ねて、ご指導、ご鞭撻賜りますようお願い申し上げ、私の所信とさせていただきます。