中村洋一この場で陳述を許していただくことを感謝申し上げます。
私は長年内科医として外来診療、在宅医療、またがんの末期患者、それから難病など、いろんなことを経験してまいりました。
全国保険医団体連合会を代表して、健康保険法、今回の改正案と、高額療養費に関する議員立法について、意見を述べさせていただきます。
まず一部保険外療養についてです。
我が国では、疾病不詳に対して、診察、薬剤、処置、手術、看護など必要な医療を患者に等しく給付してきました。
これらをセットで保険給付することで、患者に安心、安全な医療を保障してきました。
今回の一部保険外療養は、患者を線引きして薬剤について給付を制限することになります。
公的医療保険制度の運用を根底から覆す制度改変です。
法案からの削除を求めます。
以下、問題点を述べます。
第一に、現役患者は負担増になる点です。
薬剤負担増に関わって現役世代の保険料の軽減が強調されていますが、見直しに伴う保険料軽減はわずか年400円、月33円に過ぎません。
他方、受診したら薬代には保険が効かず、負担増を被ります。
1枚目のスライドをご覧ください。
例えば、花粉症で受診した患者で内服薬を1種類、点眼薬、点鼻薬を処方されたときには、今回の一部保険外療養で薬剤費の4分の1が追加負担となると、月1500円の負担増になります。
このように、現役世代にとっては負担増でしかありません。
同じように保険料を支払っているのに、受診したら薬代で大幅な負担増となれば、有権者たる国民の納得は到底得られません。
第二に、受診を抑制させ、市販薬の利用を促進する問題です。
そもそも軽い症状でも、実は重大な疾患の症状であるなどの事例は少なくありません。
議員の中にもお医者さんがいらっしゃいますので、経験があると思います。
軽微な咳などであっても感染症だった場合、放置していたり受診せず市販薬に頼っていると、周囲に感染を広げる形も出てきます。
自己判断による市販薬の使用も危険です。
消炎鎮痛剤の長期服用などは、心血管系イベントや腎臓・肝臓の機能低下、障害の悪化や血球数の低下など、さまざまな副作用があります。
臨床症状が出ず、検査によって状態が分かるケースもあり、自己判断での漫然とした使用は危険です。
2枚目のスライドをご覧ください。
消炎鎮痛剤は、他の薬と併用した場合、他の薬の効果の増強や減弱などを招きます。
これらには、血液をサラサラにする薬や、血圧、血糖値を下げる薬など、いろいろあります。
例えば国内で高血圧症の患者は4300万人と言われています。
自己判断でのロキソニン服用により、血圧の上昇や降圧薬の効果の減弱などで高血圧が悪化して、脳血管障害や心血管障害を発症する方が増えることが危惧されます。
つまり保険支出が増えるということになりますね。
こうした副作用や併用作用はOTC薬全般で問題になります。
薬物療法は医師による指導管理が大切と考えます。
また、スイッチOTCでセルフメディケーションの推進というのも問題が多いと思っております。
3枚目と4枚目のスライドをご覧ください。
私どもの協会でも講演していただきましたが、この間、市販で購入できる医薬品のハードルが下げられてきたことを背景に、中高生を中心に市販薬の過剰摂取利用、いわゆるオーバードーズが広がり、自殺につながる社会問題となっております。
一部保険外療養に伴うセルフメディケーション推進によって、安易な薬物利用の風潮が促進されて、オーバードーズが助長される事態を危惧します。
第三に、対象薬剤や金額の拡大の歯止めがなく、負担増が際限なく広げられていきます。
5枚目のスライドです。
東京新聞の報道ですが、昨年12月、自民党と日本維新の会の与党の協議の場では、最大で約1,200成分で薬剤費の全額負担を求め、医療費にして約2兆円を給付削減し、患者負担増とする案も検討の俎上に上がっております。
約7,000品目に相当して、薬価収載された品目数が1万6,000弱なので、半数近くに及びます。
こうした協議を背景にして、昨年末の厚労省と財務省の大臣折衝事項では、医療用医薬品の相当部分にまで対象医薬範囲を拡大することを目指し、2027年度以降に対象範囲を拡大していくとしております。
負担割合についても、大臣折衝事項では負担割合の引上げについて検討するとしています。
事実上、医師が投与する薬の大半で給付を大幅に制限していくことが、既定路線となっております。
第四に、さらに重大なのが、実は負担増の対象が薬剤にとどまらない問題です。
本法案の一番の問題点として、健康保険法第63条第2項に新設される第6号の文言により、厚労大臣の告示一つで保険給付の範囲を薬剤費にとどまらず、診察、検査、処置といったあらゆる医療行為まで広げて縮小できる、いわば白紙委任事項の条項が埋め込まれています。
これは事実上の混合診療に道を開くものです。
一部保険外療養において、診察、治療、材料、検査、診断、処置、手術などの治療、在宅療養や入院療養といった健康保険法第63条第1項で定める療養の給付で掲げる範囲についても、給付を制限できるのではないかと、国会質問がありました。
大臣と狭間保険局長とも、現時点では考えていないという答弁に終始しておりますが、医療全体の給付を制限できることを否定していません。
今回は検討しないが、その後はあるかもしれないということです。
一部保険外療養が導入されれば、OTC類似薬、医療用医薬品の全般の給付の制限除外にとどまらず、政府が軽度だとみなす疾患を保険から外すことができることになります。
例えば一般的な採血、水分点滴や皮下注射、簡易な外科処置や短期のリハビリ、心理療法、軽い麻酔など、さまざまな医療が重度な疾患治療ではないとして給付が制限されていくのではないでしょうか。
しかもこうしたことは全て国会審議を経ない、省令によって実施できます。
最後に配慮対象も一部に限定されている点です。
がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患などを配慮するとしています。
つまり、多くを占める花粉症などの季節性の患者、季節の変わり目や一定時期の頭痛、便秘症などの患者は配慮されません。
答弁では、がんにしてもがん治療に伴う副作用での使用に限られ、アトピーも年間を通じて症状があり、通院する患者に限定しています。
がん患者が花粉症で受診する場合や、夏場乾燥期などに症状が悪化して通院するアトピーでは負担増ということになります。
難病にしても指定難病で医療費助成を受ける者に限定されることが危惧されます。
これら配慮対象にしても、あくまで具体的な中身は法案成立後に審議会などで決めるため、確約されたものではありません。
次に妊娠・出産に対する支援の強化です。
現在10万ある診療所のうち、分娩に対応できる施設は1%に過ぎません。
この診療所が全国の分娩数の半数近くになっており、産科診療所なくしては我が国のお産医療は成り立ちません。
ベテラン高齢の開業医が長時間労働のもと、地域のお産医療をギリギリのところで持っています。
こうした中、制度変更などで負担を無理させれば、地域からのお産医療はなくなりかねません。
給付方式の選択はあくまで産科施設の任意に委ねるとともに、周産期医療提供体制の確保に向けて、給付方式の選択はあくまで産科施設の任意に委ねるとともに、