阪本真由美本日はこのような大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の阪本真由美です。
私は防災教育ですとか被災者支援、防災政策などについて研究をしております。
本日はその観点から防災庁の意義ですとか、今後目指すべき方向性についてお話をさせていただきます。
日本は地震、津波、豪雨災害、火山などの自然災害のリスクが大変大きい国です。
先日も北海道・青森県沖を震源とする大きな地震がありまして、北海道三陸沖、紅白津地震注意情報なども出されました。
こういう情報をきっかけに防災体制を確認し徹底するということは極めて重要です。
けれども、それだけで被害が減らせるのでしょうか。
この点について極めて大きい課題を突きつけたのが2024年の能登半島地震だったと思います。
資料に沿って説明したいと思いますので、1ページおめくりください。
能登半島地震では大きく3つの課題が示されたと考えています。
1点目は防げるはずの災害関連死を減らせなかった点。
2点目が被災後の復興が難しい地域がある点。
3点目が災害支援の仕組みが十分機能していなかった点です。
これらの課題が生じる最大の原因は、災害対策の責任が各省庁、そして地方自治体に分散されており、それを統合する司令塔としての仕組みが今の日本にはない点です。
もちろん内閣府は災害が起きたときにさまざまな動きを調整します。
けれども調整するだけでは責任を持って対応するに至りません。
司令となる組織は不可欠です。
2ページをご覧ください。
現在の災害対応の最大の課題は、災害関連死を防ぐことができない点です。
災害関連死への対策の必要性は、地震が起きた直後からわかっていました。
それにもかかわらず、能登半島地震では、12月末の時点で直接死が228名であるのに対し、災害関連死は449名に上っています。
災害関連死に認定された方のうち、既往症があった方が80歳代以上が9割、既往症があった方が95.8%に上っています。
つまり、高齢者、基礎疾患のある方の犠牲になられる率が大変高い状況になっています。
その災害関連死の原因を図1に示しています。
多いのは地震のショック、余震への恐怖による肉体的精神的負担、電気水道の途絶による肉体的精神的負担、社会福祉施設の被災による介護機能の低下、避難所生活の肉体的精神的疲労です。
これらの要因はいずれも社会的な要因です。
我々社会の要因によって本来は防げるはずの死が招かれている状況があります。
高齢化や疾病障害のある方が多いところで社会機能の寸断が長期化すると災害関連死は増えていきます。
したがって対策するには自然ハザード現象の分析だけでは十分ではありません。
社会特性をきちんと把握し、高齢化率であったり、社会機能がどれだけ維持できるのかという点からもきちんと把握して対策を検討する必要があります。
それにもかかわらず、現在では災害が起きた後に災害関連死の認定作業を行ってはいるものの、災害関連死を防ぐための事前対策はほとんど行っていません。
それについても責任を持って進めていく仕組みづくりというのが求められます。
3ページをご覧ください。
先ほど、気仙沼の菅原市長からも話がありましたが、現在、能登の被災地でも最大の課題になっているのが人口減少です。
図には、輪島市のデータを示しています。
輪島市では、68%の住民が住まいを失って仮住まいであり、24%の人は市外に居住しています。
中でも生産年齢に該当する若い世代では、37%が市外に居住しているような状況です。
どうして市外に居住しているのか理由を聞くと、若い世代は転職のため、教育を受けさせるため、70歳代以上からは医療福祉サービスのためという回答が上がってきます。
つまり雇用、教育、福祉サービス、医療サービスの継続こそが人口減少を防ぐ、人口流出を防ぐ一番大事な対策です。
それにもかかわらず、その対策が事前に検討されていません。
復興というと、住まいや町づくりに焦点が置かれがちで、暮らしを再建する対策が不十分です。
これを災害が起きたときから導入できるような方向性を検討していかなければいけません。
今お伝えした災害関連死、あるいは人口減少という課題は、先ほど話にありましたように、東日本大震災でも指摘されている課題です。
それにもかかわらず、なぜこの問題が繰り返してしまうのか。
その背景には災害対応に関わる自治体、行政の職員の方が専門的な知識を持っていない、いわば素人だからという事情があると思います。
行政の防災を担当する職員の多くは一般の事務職です。
防災専門職を配置している自治体は限られています。
つまり素人が災害対応をしていて、過去にほかの地域で起きた災害の知識もほとんどありません。
したがって人材育成の仕組みは不可欠です。
また災害が起きたときに被災市町に寄り添ってサポートする仕組みも必要になります。
災害が起きると被災市町の職員は被災者でありながら支援者でもあるという立場に置かれます。
4ページをご覧ください。
2024年の能登半島地震における輪島市の職員が1月1日から最初の5日間どこに滞在して業務をしていたかという数字を示しています。
大変申し訳ありませんが数字に若干誤りがあるので修正させていただきます。
この図3のデータは1月1日から5日までの主な宿泊先となります。
指定避難所に滞在されていた方が28ではなく26%、そして下屋避難所以外の場所に滞在していた方は7%、自宅に滞在されていた方が23%、知人親戚宅が5%、車中泊が18%、ホテルは0.3%です。
これに庁舎という言葉が加わります。
庁舎にいらっしゃった方が7%でした。
職員の多くはこのようにご自身の生活基盤を失った中で災害対応を強いられていました。
自治体の職員だけではなく警察、消防、保健医療福祉の関係者、教育関係者、地域の人を支援していた方々、自らが被災者でありながら支援者でもありました。
こういう被災支援者をサポートしていく仕組みというのが必要です。
人的だけではなくて財政的にも事業が継続できるようなサポートの仕組みが必要なんですが、残念ながらその点は未だ議論されていません。
この点についても今後対策が求められます。
5ページをご覧ください。
災害時に避難される方は避難所だけにいるわけではありません。
在宅避難、車中泊、親戚知人宅、ホテル旅館等にも滞在しています。
これら避難所外にいる方への情報把握の体制がどうなっているのか、内閣府が行った調査の結果を6ページにお示ししています。
全国の市町村に対して避難所外避難者の情報把握の仕組みがあるのか確認したところ、回答のあった1162市区町村のうち726市区町村、62%相当が仕組みがないと回答をしています。
災害対策基本法ではこれらの人々にも支援を届けることがきちんと明文化されているにもかかわらず、仕組みがないと答えているところがほとんどです。
現在の市町村の体制では、避難所支援に人を配置するのが精一杯であり、避難所外のところへ支援することは厳しい現状があります。
ですので、行政だけではなく、官民連携によって被災者を支援することが求められます。
全ての被災者を支援するために、国は令和3年度から避難生活防災人材育成エコシステムというのを始めています。
人材育成の取組もしており、避難者を支援するリーダー、サポーター養成研修も行っています。
令和7年度は27市区町村に対して研修が行われています。
けれども、全国には1741の市区町村があります。
実施されたところをパーセンテージで表すと、0%相当になってしまいます。
もっと全国レベルでこの仕組みを改善していく必要があります。
今回の災害対策基本法の改正において、すべての被災者がその被災地にかかわらず、できる限り良好な生活環境をあまねく享受できるよう、支援体制を整備することが明記されたのは大変大きな前進だと考えています。
けれども、こういう法律上に明文化するだけではなくて、その運用体制を具体的に考えていくことこそが、これから先に求められることだと思います。
また災害対応においては官民連携により対策が実際に現場で進められているものもあります。
8ページをご覧ください。
能登半島地震では官民連携による二次避難が行われて、最大時には5275人が避難しました。
民間施設を活用した二次避難としては過去災害最大の規模でした。
国と県と旅行宿泊業界による能登半島二次避難所運営事務局というのが設置されまして、旅館業界のノウハウを生かして旅館、宿、ホテルなどを探し、避難希望者とのマッチングが行われました。
これは大変素晴らしい取組だったと思いますし、直前にあった新型コロナウイルスの感染拡大のときに、民間の宿泊施設を療養施設として利用した経緯もあり、行政と民間宿泊業界との連携ができていた。
これはとてもよかったと思います。
けれども、この仕組みを制度化しないと、これから先、